樹脂加工とは?主な種類や切削などの加工方法、メリットを解説
樹脂加工とは、合成樹脂(プラスチック)を材料に、製品や部品を作り出す技術全般を指します。
この記事では、樹脂加工の基礎知識として、材料となるプラスチックの主な種類や、目的別の加工方法、特に精密な形状を実現する切削加工について解説します。
さらに、樹脂を材料として選ぶメリットや、業者選びのポイントも紹介するため、樹脂製品の開発や製造を検討している場合に役立ちます。
そもそも樹脂加工とは?プラスチックとの違いも解説
樹脂加工とは、合成樹脂、一般的にプラスチックと呼ばれる素材を、熱や圧力を加えたり、切削したりすることで目的の形状に作り上げる技術のことです。
樹脂は、石油などを原料として人工的に合成された高分子化合物を指します。
一方、プラスチックは、その樹脂を主原料として、添加剤などを加えて成形しやすくした材料を指すことが多くあります。
しかし、実際には「樹脂」と「プラスチック」はほぼ同義で使われることがほとんどです。
樹脂加工は、日用品から工業製品、医療機器まで、多岐にわたる分野で不可欠な製造技術となっています。
この加工技術により、様々な機能を持つ製品を効率的に生産することが可能です。
樹脂加工で使われる代表的なプラスチックの種類
樹脂加工で用いられるプラスチックは、熱に対する性質によって大きく2種類に分類されます。
さらに、強度や耐熱性などを高めたエンジニアリングプラスチックも存在します。
それぞれに特性が異なり、製品の用途や求められる性能に応じて最適な材料が選定されます。
近年では、金属の代替として車の部品などに使用される高性能な樹脂も増えており、その種類は多岐にわたります。
熱を加えると変形・再利用できる「熱可塑性樹脂」
熱可塑性樹脂は熱を加えると軟化して溶け、冷やすと固まる性質を持つプラスチックです。
この特性により再加熱すれば再び成形できるため、リサイクルに適している点が大きな特徴となります。
代表的な種類としては汎用性が高く衝撃に強いABS樹脂、透明性に優れ看板や水槽などに使われるアクリル樹脂、耐摩耗性や強度に優れたナイロンなどが挙げられます。
熱を加えることで容易に加工できるため、射出成形をはじめとする大量生産向けの加工方法で広く利用されています。
その汎用性の高さから日用品から工業製品まで、幅広い分野で最も多く使用されている樹脂です。
一度固まると再加熱しても変形しない「熱硬化性樹脂」
熱硬化性樹脂は、加熱すると化学反応によって硬化し、一度固まると再加熱しても軟化したり溶けたりしない性質を持つプラスチックです。
この不可逆的な特性により、優れた耐熱性、耐薬品性、機械的強度を持ちます。
代表的な種類には、接着剤や塗料、電子部品の封止材として広く使われるエポキシ樹脂、耐熱性や耐水性に優れ、調理器具やシーリング材に用いられるシリコン樹脂、断熱材やクッション材として馴染み深いポリウレタンなどが含まれます。
熱に強く寸法安定性が高いため、高温環境下で使用される部品や、高い信頼性が求められる電気・電子部品などに適しています。
金属の代替にもなる高機能な「エンジニアリングプラスチック」
エンジニアリングプラスチック(エンプラ)は、汎用プラスチックよりも優れた機械的強度、耐熱性、耐摩耗性などを備えた高機能な樹脂の総称です。
明確な定義はありませんが、一般的にJIS(日本産業規格)では、耐熱性が100℃以上といった基準が示されています。
これにより、従来は金属が使用されていたような、高い負荷がかかる工業部品や機械部品への利用が可能となりました。
例えば、株式会社ダイセルが開発したセプラ(SEPARA)のような特殊なグレードも存在します。
軽量でありながら高い性能を持つため、自動車、航空宇宙、電子機器など、さまざまな分野で金属からの代替が進んでいます。
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樹脂加工の主な方法を目的別に紹介
樹脂加工には、目的とする加工品の形状や生産量、要求される精度に応じて様々な方法が存在します。
金型を用いて同じ形状のものを大量生産する成形加工や、材料の塊から精密な形状を削り出す切削加工が代表的です。
その他にも、部品同士を接合したり、板材を曲げたりする加工方法もあります。
それぞれの方法には異なる特徴があり、適切な機械や工程を選択することが、品質とコストを両立させる上で重要になります。
金型を使って大量生産する「成形加工」
成形加工は、金型の中に溶かした樹脂を流し込み、冷やし固めることで製品を作る方法です。
代表的なものに射出成形があり、一度金型を製作すれば、同じ形状の製品を短時間で大量に生産できるため、製品一個あたりのコストを安価に抑えられる点が最大のメリットです。
このため、ペットボトルやスマートフォンの筐体など、身の回りの多くのプラスチック製品がこの方法で作られています。
ただし、初期費用として高額な金型製作費が必要になるため、少量生産には向いていません。
近年では、3Dプリンターの技術も成形加工の一種と見なされることがあり、金型不要で一点から製作できるため、試作品開発などで活用が進んでいます。
材料を削って精密な形を作る「切削加工」
切削加工は、ドリルやエンドミルといった刃物を用いて樹脂の塊から不要な部分を削り取り、目的の形状を作り出す加工方法です。
金型が不要なため、1個からの試作品製作や小ロット生産、複雑な形状の加工に適しています。
代表的な機械には、材料を回転させて削る旋盤(NC旋盤)や、材料を固定して工具を回転させて削るフライス盤があります。
これらの機能を複合し、プログラム制御(NC)によって自動で工具交換を行い多面的な加工が可能なマシニングセンタも広く使われます。
特に5軸マシニングセンタは、より複雑な形状を高精度に加工できます。
切削時には摩擦熱が発生するため、油などの切削液を用いて冷却しながら加工することもあります。
接合や変形を目的とした「接着・溶接・曲げ加工」
樹脂加工には、形状を作るだけでなく、部品同士を接合したり、板状の材料を変形させたりする方法も含まれます。
接着加工は接着剤を用いて部品を接合する手法で、異なる種類の樹脂も接合可能です。
溶接加工は、樹脂の接合面に熱や超音波を加えて溶かし、一体化させる方法であり、強力な接合強度が得られます。
曲げ加工は、板状の樹脂を加熱して軟化させ、目的の角度に曲げる加工を指します。
この他にも、レーザー光を利用して微細な穴あけや切断を行うレーザー加工、製品の表面に機能性を付与するコーティング、既存の加工品に穴あけなどの追加工を施すこと、トムソン型などでシート状の材料を打ち抜く抜き加工など、用途に応じた多様な技術が存在します。
材料に樹脂を選ぶことで得られるメリット
樹脂を材料として選ぶ最大のメリットの一つは、その軽量性にあります。
金属と比較して密度が低いため、製品の軽量化に大きく貢献し、輸送コストの削減や燃費向上にもつながります。
また、錆びることがなく、多くの薬品に対して耐性を持つため、水回りや屋外、化学薬品を使用する環境でも長期間性能を維持できます。
電気を通さない絶縁性も特徴であり、電子機器の筐体や部品に広く利用されます。
さらに、着色が容易でデザインの自由度が高いことや、金型を使えば複雑な形状の製品でも大量に安価で生産できる点も大きな利点です。
樹脂は、布や紙のように柔軟なシート状にしたり、生地にコーティングして防水性を持たせたり、服のボタンになったりと、その用途は極めて広いです。
樹脂加工で注意しておきたいデメリット
樹脂材料には多くのメリットがある一方、いくつかのデメリットも存在します。
まず、多くの樹脂は金属に比べて機械的強度が低く、特に耐衝撃性や剛性が求められる用途には向かない場合があります。
また、耐熱性が低い種類が多く、高温環境下では変形や溶解、劣化を起こしやすいです。
紫外線に弱い性質を持つ樹脂もあり、屋外での使用により変色や強度の低下が進むことがあるため、耐候性の高いグレードや表面処理が必要になります。
さらに、金型を使用する成形加工の場合、初期費用が高額になるため少量生産ではコストが見合いません。
リサイクル可能な熱可塑性樹脂であっても、再生材(リプロ)は新品の材料に比べて物性が低下する可能性も考慮しなければなりません。
信頼できる樹脂加工業者を選ぶ際の3つのポイント
樹脂加工を依頼する際には、自社の要望に応えられる信頼性の高い会社を選ぶことが重要です。
日本国内には数多くの樹脂加工業者が存在するため、技術力、対応力、品質管理といった複数の観点から比較検討する必要があります。
特に、求める製品の品質やコスト、納期を実現するためには、加工業者の持つ設備や実績、体制を事前にしっかりと確認することが、プロジェクトの成功を左右する鍵となります。
希望する加工方法や精度に対応できるか
樹脂加工業者を選定する上で最も重要なのは、自社が希望する加工方法と要求精度に対応できる技術力と設備を備えているかという点です。
例えば、ミクロン単位の精密な寸法公差が求められる部品の場合、高性能な工作機械と温度管理された加工環境、そして熟練した技術者の存在が不可欠となります。
業者のウェブサイトで加工事例や保有設備を確認し、過去にどのような製品を手がけてきたかを確認することが有効です。
また、複雑な形状の加工や、特殊な樹脂材料での加工実績があるかも重要な判断材料になります。
事前に図面や仕様を提示し、どの程度の精度まで対応可能か、具体的な数値を交えて確認することが望ましいです。
試作品など小ロットからの依頼が可能か
製品開発の段階では、設計の検証や機能評価のために、まず試作品を製作することが一般的です。
そのため、1個からの試作や、数十個程度の小ロット生産に柔軟に対応してくれる加工業者であるかは、非常に重要な選定ポイントとなります。
切削加工や3Dプリンターなど、金型を必要としない加工方法に対応している業者であれば、小ロットの依頼にも比較的スムーズに対応できる可能性が高いです。
試作品の製作を快く引き受けてくれる業者は、開発段階から良きパートナーとなり得ます。
依頼を検討している業者に、最小ロット数や試作の場合の費用感、納期などを事前に問い合わせ、自社の開発スケジュールや予算に合うかどうかを確認することが重要です。
品質管理体制と納期の柔軟性を確認する
製品の品質を安定させ、計画通りに生産を進めるためには、加工業者の品質管理体制と納期への対応力を確認することが不可欠です。
ISO9001などの品質マネジメントシステムの認証を取得しているか、製品の検査体制は整っているかといった点は、品質を担保する上での一つの指標となります。
また、急な仕様変更や短納期への対応が可能かどうかも確認しておきたいポイントです。
例えば、ミスミ(MISUMI)が提供するmeviy(メヴィー)のようなオンラインサービスでは、3Dデータをアップロードするだけで即時に見積もりと納期が確認でき、短納期での発注が可能です。
依頼前に見積もりを依頼し、その回答スピードや内容の丁寧さから、企業の対応力や姿勢を判断することも有効な手段です。
まとめ
樹脂加工は、材料となるプラスチックの種類と加工方法の組み合わせによって、多種多様な製品を生み出す技術です。
プラスチックは熱に対する性質から熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に大別され、さらに高機能なエンジニアリングプラスチックも存在します。
加工方法には、大量生産向きの成形加工や、高精度な単品加工に適した切削加工などがあり、目的に応じて選択されます。
軽量性や絶縁性といったメリットがある一方で、強度や耐熱性などのデメリットも存在するため、材料の特性を理解することが求められます。
加工を依頼する際は、業者の技術力、小ロットへの対応力、品質管理体制などを総合的に評価し、自社の要件に最も適したパートナーを選定します。
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