ステンレスとは
ステンレスとは、鉄を主成分にクロムを一定量以上含ませた合金鋼の一種です。耐食性に優れている点が大きな特徴であり、その意味で非常に有用な素材として幅広く利用されています。クロム含有量が10.5%以上、炭素含有量が1.2%以下の鋼と定義されています。単にステンレスと呼ばれることが多いですが、正式名称はステンレス鋼です。
ステンレスの基礎知識
ステンレスは私たちの身の回りの様々な場所で使われている一般的な金属材料です。その種類は多岐にわたり、それぞれの特性を理解することで、より適切に活用できます。
ステンレスの定義
ステンレスとは、鉄を基本として、クロムを10.5%以上含有する錆びにくい合金鋼の総称です。このクロムの働きにより、表面に非常に薄い酸化被膜が形成され、金属の内部が保護されるため、優れた耐食性を発揮します。
ステンレスの名前の由来
ステンレスの名前は、英語の「stainlesssteel」に由来しています。「stainless」は「錆びない」「染みにならない」という意味で、「steel」は「鋼」を意味します。これらを合わせて「錆びない鋼」となり、日本では「ステンレス」という呼び方が一般的になりました。また、「サス」という略称で呼ばれることもあり、これは「SteelUseStainless」の頭文字をとったものです。「eステンレス」という言葉は一般的ではありません。
ステンレスと鉄の違い
ステンレスと鉄の最も大きな違いは、その錆びにくさにあります。鉄は時間の経過とともに酸化しやすく錆が発生しやすい性質がありますが、ステンレスはクロムを含むことで錆びにくい特性を持っています。強度という点では、どちらも高い強度を持ちますが、ステンレスは合金化によりさらに高い引張強度や圧縮強度を持つ種類も存在します。また、多くのステンレスは磁性を持たない、あるいはほとんど持たないという違いもありますが、種類のよっても異なります。
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なぜステンレスは錆びにくいのか
ステンレスが錆びにくいのは、含まれているクロムの働きによるものです。これにより、金属の表面に特殊な膜が形成され、錆の発生を抑制する効果が得られます。この特性はステンレスの大きなメリットと言えます。
鉄が錆びる仕組み
鉄が錆びる現象は、鉄が空気中の酸素や水分と反応して酸化鉄を生成することで起こります。これは「腐食」と呼ばれる化学反応の一種です。特に湿度の高い環境では、この酸化反応が促進されやすくなります。
ステンレスに錆が発生しにくい理由
ステンレスが錆びにくいのは、含まれているクロムが鉄よりも優先的に酸素と結びつく性質があるためです。これにより、鉄が酸化して錆びる前に、クロムが表面で酸化物の非常に薄い膜を形成します。この膜が、水や酸素が金属の内部に到達するのを防ぎ、錆の発生を強く抑制します。
表面にできる不動態皮膜
ステンレスの表面に形成される薄い酸化皮膜は「不動態皮膜」と呼ばれます。この皮膜は数ナノメートル(1ミリメートルの100万分の3程度)という非常に薄い膜ですが、非常に緻密で強固な性質を持っています。不動態皮膜は傷ついても、周囲に酸素があれば自己修復する機能も持っており、これがステンレスの優れた耐食性を維持する理由の一つです。
ステンレスは全く錆びないのか
ステンレスは「錆びにくい」金属であり、全く錆びないわけではありません。特定の環境や条件によっては錆びが発生することもあります。これはステンレスの理解しておくべき欠点の一つと言えるかもしれません。
ステンレスは非常に耐食性が高い金属ですが、全く錆びが発生しないわけではありません。強い酸やアルカリにさらされたり、湿度が高い環境が続いたりすると腐食する場合があります。また、鉄製品から錆が移る「もらい錆び」や、不動態皮膜が傷つき、自己修復が追いつかない場合に部分的に錆びることもあります。特に塩化物イオンを含む環境(海岸部や融雪剤が付着する場所など)では、孔食(小さな穴のような錆び)、すきま腐食、応力腐食割れといった局部的な腐食が発生しやすいので注意が必要です。
ステンレスの主な種類と特徴
ステンレスには様々な種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。用途に応じて適切な種類のステンレスを選ぶことが重要です。ここでは一般的な分類と特性の違い、そして保温性について解説します。
一般的な分類
ステンレス鋼は、主にその金属組織によっていくつかの系統に分類されます。代表的なものとして、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系、二相系(オーステナイト・フェライト系)、析出硬化系があります。SUS304はオーステナイト系の代表的な種類で、耐食性、加工性、溶接性に優れ、最も広く使われています。SUS316はSUS304にモリブデンなどを添加し、さらに耐食性を高めた種類です。SUS430はフェライト系の代表で、クロムを主成分とし、加工性や耐食性がありますが、オーステナイト系に比べると劣ります。
特性による違い
ステンレスの種類によって、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)といった添加される元素の種類や量、熱処理の有無によって、その特性は大きく異なります。例えば、オーステナイト系ステンレスはニッケルを含むため、優れた耐食性や加工性を持ちますが、比較的高価です。フェライト系はニッケルを含まないため、比較的安価で加工性に優れていますが、耐食性はオーステナイト系に劣る傾向があります。マルテンサイト系は炭素量が多く、熱処理によって非常に高い硬さを得られるため、刃物などに使用されます。二相系はオーステナイトとフェライトの両方の組織を持ち、強度と耐食性のバランスに優れています。
保温性について
ステンレス製水筒などに代表されるように、ステンレスは保温性に優れているという特徴があります。これは、ステンレス鋼が他の金属(鉄や銅など)に比べて熱伝導率が低い性質を持つためです。熱が伝わりにくいため、内容物の温度が外気に影響されにくく、温かいものは温かく、冷たいものは冷たいまま保つ時間が長くなります。
ステンレスの歴史
ステンレスは比較的歴史の新しい金属材料です。その誕生には、クロムという元素の発見と、多くの研究者の試行錯誤がありました。
クロムの発見と初期の研究
ステンレスの歴史は、1761年にクロムが発見されたことに始まります。フランスの科学者であるルイ・ニコラ・ヴォークランが、シベリア産の鉱石から未知の金属を発見し、1797年に「クロム」と名付けました。その後、1800年代初頭には、鉄にクロムを添加することで耐食性が向上することが知られるようになりましたが、当時の技術では実用化には至りませんでした。
ステンレス鋼の実用化
1900年代に入り、クロムと鉄の合金に関する基礎研究が進み、耐食性の原理などが明らかにされました。そして1910年代になると、工業的・商業的な実用化が始まりました。イギリスのハリー・ブレアリーがマルテンサイト系ステンレス鋼を、ドイツのベンノ・シュトラウスとエドゥアルト・マウラーがオーステナイト系ステンレス鋼を開発したことが、その後のステンレス鋼の発展につながりました。特に、18クロム-8ニッケルの組成を持つオーステナイト系ステンレス鋼(いわゆる18-8ステンレス)は、その優れた特性から様々な分野で広く利用されるようになりました。日本国内でのステンレス鋼の国産化は、1932年に成功しています。
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