ロウ付けとは?溶接との違いや基礎知識の解説|NBK株式会社
ロウ付けとは、接合したい金属(母材)よりも低い融点を持つ合金(ロウ材)を溶かして、金属同士を接合する技術です。
「ろう付け」とも表記されます。
母材自体を溶かす「溶接」とは異なり、ロウ材を接着剤のように用いて金属をつなぎ合わせる点が大きな特徴です。
この記事では、ロウ付けの基本的な原理から、溶接やはんだ付けとの違い、メリット・デメリット、必要な道具や具体的な手順までを網羅的に解説します。
ロウ付けとは?母材を溶かさずに金属を接合する技術
ロウ付けは、接合したい二つ以上の金属(母材)の間に、母材の融点よりも低い融点を持つ「ロウ材」を溶かして流し込み、そのロウ材が冷却・凝固する力を利用して接合する方法です。
このプロセスでは、母材そのものは溶融しません。
ロウ材が毛細管現象によって母材の接合面の隙間に浸透し、素材同士を濡らすことで金属学的な結合が生まれます。
この原理により、異なる種類の金属同士や、金属と非金属の接合も可能になります。
ロウ付けと他の接合方法との違いを徹底比較
金属を接合する方法には、ロウ付けの他に「溶接」や「はんだ付け」があります。
これらの技術は、加熱して金属をつなぎ合わせる点で似ていますが、その原理や特性は大きく異なります。
ロウ付けは、ロウ材という合金を接着剤のように用いて接合するのに対し、溶接は母材自体を溶かして一体化させます。
また、はんだ付けはロウ付けよりも低い温度で接合を行う方法であり、強度や用途が異なります。
それぞれの違いを理解することが、適切な接合方法を選ぶ上で重要です。
【比較表】ロウ付け・溶接・はんだ付けの違いが一目でわかる
ロウ付け、溶接、はんだ付けの主な違いは、接合温度、母材の溶融の有無、そして接合強度にあります。
溶接は母材自体を3,000℃以上で溶融・凝固させて接合するため、最も強度が高くなります。
一方、ロウ付けは450℃以上で母材を溶かさずにロウ材で接合し、はんだ付けは450℃未満の低温で、はんだごてなどを用いて行います。
強度は「溶接>ロウ付け>はんだ付け」の順となり、接合部の仕上がりの美しさや、接合できる素材の多様性はロウ付けが優れています。
溶接との決定的な違いは「母材を溶かすかどうか」
ロウ付けと溶接の最も大きな違いは、接合時に母材を溶かすかどうかにあります。
溶接は、母材同士を直接、または溶加材と共に高温で溶かして一体化させる接合方法です。
これにより、接合部は母材と同等の強度を持つことができます。
対してロウ付けは、母材は溶かさず、母材よりも融点の低いロウ材だけを溶かして接合します。
母材を溶かさないため、熱による変形や歪みが少なく、精密な部品や薄い板の接合に適しているという利点があります。
はんだ付けとの違いは「接合温度と強度」
ロウ付けとはんだ付けは、母材を溶かさずに溶加材(ロウ材やはんだ)で接合するという原理は同じですが、「接合温度」と「強度」に明確な違いがあります。
一般的に、接合温度が450℃以上のものを「ロウ付け」、450℃未満のものを「はんだ付け」と定義しています。
はんだは比較的低い温度で溶けるため、電子部品などの熱に弱い部分の接合に用いられます。
一方、ロウ付けはより高い温度で接合するため、はんだ付けに比べて格段に高い接合強度が得られます。
知っておきたいロウ付けの5つのメリット
ロウ付けは、溶接やはんだ付けにはない多くのメリットを持つ接合技術です。
母材を溶かさずに接合するという基本原理から、異種金属の接合が可能であったり、熱による影響を抑えられたりと、様々な利点が生まれます。
これらのメリットを理解することで、製品の設計や製造プロセスにおいて、ロウ付けを効果的に活用することができます。
ここでは、ロウ付けが持つ代表的な5つの利点について詳しく見ていきましょう。
異なる種類の金属同士も接合できる
ロウ付けは、母材を溶かさずに接合するため、融点が異なる金属同士の接合が可能です。
例えば、鉄と真鍮(黄銅)、銅とステンレス(SUS)、ニッケル合金同士など、溶接では接合が難しい異種金属の組み合わせにも対応できます。
さらに、金属とセラミックのような非金属材料との接合も実現できるため、応用範囲が非常に広いのが特長です。
この特性は、多様な素材を組み合わせる現代の製品開発において大きな強みとなります。
母材への熱影響が少なく、変形しにくい
ロウ付けは、母材の融点よりも低い温度で作業を行うため、母材への熱影響を最小限に抑えることができます。
溶接のように母材自体を高温で溶かす必要がないため、熱による変形やひずみの発生が少なくなります。
この特性は、精密な寸法精度が求められる部品や、厚みの薄い板などの接合に特に有効です。
低温での処理が可能なため、母材の組織が変化したり、機械的性質が劣化したりするリスクも低減できます。
気密性・水密性の高い接合が可能
ロウ付けでは、溶けたロウ材が毛細管現象によって接合面の隙間にくまなく浸透します。
この現象により、接合部全体にロウ材が均一に行き渡り、巣(空洞)のない連続した接合層が形成されます。
その結果、非常に高い気密性や水密性を持つ継手を作ることが可能です。
この特性を活かして、エアコンの配管や圧力容器、真空装置など、ガスや液体の漏れが許されない部品の製造に広く利用されています。
複雑な形状の部品も接合しやすい
ロウ付けは、点や線だけでなく面での接合も可能であり、複雑な形状の部品や多数の部品を一度に接合するのに適しています。
例えば、細いパイプで構成された自転車のフレームや、微細な部品が組み合わさった製品の加工に適しています。
母材を溶かさないため、接合後も部品の寸法精度を高く維持できる点も大きな利点です。
大きさや形状の自由度が高く、設計の可能性を広げる接合方法といえます。
自動化しやすく大量生産に向いている
ロウ付けは、プロセスを自動化しやすいというメリットもあります。
特に「炉中ロウ付け」と呼ばれる方法では、コンベア式の炉などの設備を用いて、多数の部品を一度に加熱・接合することが可能です。
フラックスの塗布からロウ材のセット、加熱、冷却までの一連の工程を機械化・自動化することで、品質の安定した製品を効率的に大量生産できます。
このため、自動車部品や電気製品など、多くの工業製品の製造ラインで採用されている装置です。
注意すべきロウ付けの3つのデメリット
ロウ付けは多くの利点を持つ一方で、いくつかの注意すべきデメリットも存在します。
例えば、接合部の強度は母材そのものには及ばず、接合前の下準備が品質を大きく左右します。
また、仕上がりの外観に影響が出る可能性も考慮しなくてはなりません。
これらのデメリットを理解し、適切な対策を講じることで、接合不良のリスクを減らし、ロウ付けのメリットを最大限に活かすことができます。
取り外しが困難な場合や、強い衝撃がかかる部分での割れにも注意が必要です。
接合部の強度は母材より低い
ロウ付けのデメリットとしてまず挙げられるのが、接合部の強度が母材そのものの強度には及ばない点です。
接合はロウ材を介して行われるため、接合部の強度は基本的に使用するロウ材の強度に依存します。
溶接のように母材同士が一体化するわけではないため、一般的に溶接継手ほどの高い強度は得られません。
そのため、大きな荷重や衝撃がかかる構造部品に適用する場合は、接合面積を広く取るなどの設計上の工夫が必要になります。
接合前の洗浄・表面処理が重要になる
ロウ付けの品質は、接合前の母材表面の状態に大きく左右されます。
母材表面に油分、汚れ、錆、酸化膜などが残っていると、ロウ材の濡れ性が悪くなり、接合部にロウがうまく流れません。
これが「ロウ流れ不良」や「未ロウ」といった接合不良の主な原因となります。
そのため、接合前にはサンドペーパーやワイヤーブラシ、あるいは酸性の液体などを用いて、これらの付着物を完全に取り除く洗浄・表面処理の工程が不可欠であり、作業条件の管理が重要になります。
ロウ材の色が母材と異なる場合がある
ロウ付けでは、接合部にロウ材が残るため、その色が母材の色と異なる場合があります。
例えば、ステンレス鋼を銀ロウで接合した場合、接合部分に銀色の線が見えることになります。
これは、ロウ材が母材とは異なる金属成分で構成されているために起こる現象です。
装飾品や外観が重視される製品においては、この色の違いが意匠性を損なう可能性があります。
そのため、製品によってはロウ材の規格や成分を考慮し、母材の色に近いものを選択する必要があります。
ロウ付けを始めるために必要な道具一覧
DIYや家庭での作業としてロウ付けを始めるには、いくつかの基本的な道具や工具を揃える必要があります。
専門的な設備がなくても、ホームセンターなどで手に入る道具で基本的なロウ付けは可能です。
安全に作業を行うための保護具も重要になります。
ここでは、ロウ付けを始めるにあたって最低限必要となる道具と、それぞれのおすすめの選び方について解説します。
適切な道具を準備することが、作業の成功への第一歩です。
熱源となるガスバーナー
ロウ付けにはロウ材を溶かすための強力な熱源が必要です。
最も一般的に使用されるのがガスバーナーです。
DIY用途ではカセットボンベを取り付けて使用するトーチバーナーが手軽で便利です。
より高温が必要な場合やプロの現場では可燃性ガス(アセチレンなど)と酸素を混合して燃焼させるさらに強力なガスバーナーが用いられます。
接合する母材の大きさや材質ロウ材の融点に応じて適切な火力を得られるバーナーを選ぶことが重要です。
接合の主役となるロウ材(銀ロウ・アルミロウなど)
ロウ材は、母材を接合するための「接着剤」の役割を果たす金属材料です。
母材の種類によって使い分ける必要があり、様々な種類が存在します。
代表的なものに、汎用性が高く多くの金属に使える「銀ロウ」、アルミニウム専用の「アルミロウ」、銅や銅合金に使われる「リン銅ロウ」などがあります。
その他、宝飾品には「金ロウ」が使われることもあります。
形状は、細い棒状やワイヤー状、板状などがあり、作業に合わせて選びます。
金属表面の酸化を防ぐフラックス
フラックスは、ロウ付け作業において非常に重要な役割を担う薬剤です。
ペースト状や粉末状のものが一般的で、加熱中に母材の表面が酸素と結びついて酸化膜が形成されるのを防ぎます。
また、既存の酸化膜を除去し、溶けたロウ材の表面張力を下げて流れを良くする(濡れ性を向上させる)効果もあります。
フラックスを塗布しないと、ロウ材が母材の上で弾かれてしまい、うまく接合できません。
使用するロウ材や母材に適したフラックスを選ぶ必要があります。
部品を固定するための固定具
ロウ付け作業中は、接合する部品が高温になるため、手で押さえておくことはできません。
そのため、作業中に部品がずれないように、しっかりと固定するための道具が必要です。
バイス(万力)で挟んだり、耐熱性のセラミックボードや耐火レンガの上に置いて作業したりするのが一般的です。
特に複雑な形状のものを組み立てる際には、部品同士の位置関係を正確に保つための専用の治具を作成することもあります。
確実な固定が、精度の高い接合につながります。
作業の安全性を高める保護具
ロウ付けは高温の炎を扱い、金属が溶ける作業であるため、安全対策が不可欠です。
まず、火花やフラックスの飛散から目を守るための保護メガネは必ず着用してください。
また、高温の部材に触れて火傷をしないよう、革製などの耐熱性のある手袋も必要です。
作業中は換気を十分に行い、可燃物を近くに置かないなど、作業環境の安全確保も重要です。
服装は、燃えにくい綿素材などの長袖長ズボンが望ましいです。
初心者でも簡単!ロウ付けの基本的な手順5ステップ
ロウ付けは、正しい手順とコツを掴めば、初心者でも行うことが可能です。
基本的なやり方は、部品をきれいにし、フラックスを塗り、加熱してロウ材を流し込み、最後に冷却して仕上げるという流れになります。
この一連のプロセスを丁寧に行うことが、きれいで強固な接合を実現するための鍵です。
ここでは、ロウ付けのやり方として、最も基本となる5つのステップを、初心者にも分かりやすく解説します。
ステップ1:接合する母材の汚れを徹底的に洗浄する
ロウ付けの成功は、この最初のステップにかかっていると言っても過言ではありません。
接合する部分(接合面)に付着している油分、錆、塗料、酸化膜などを完全に取り除く必要があります。
サンドペーパーやワイヤーブラシで物理的に研磨したり、アセトンなどの脱脂剤で拭き取ったりして、金属のきれいな地肌を露出させます。
この下地処理を怠ると、フラックスやロウ材がうまく乗らず、接合不良の直接的な原因となります。
ステップ2:フラックスを接合部に均一に塗布する
母材の洗浄が終わったら、接合部とその周辺にフラックスを塗布します。
ペースト状のフラックスであれば、筆などを使って薄く均一に塗ります。
フラックスは、加熱した際に母材表面に酸化膜ができるのを防ぎ、ロウ材の流れをスムーズにする役割があります。
塗りムラがあったり、塗り忘れた箇所があったりすると、その部分だけロウが流れなくなるため、隙間なく丁寧に塗布することが重要です。
部品を組み立てた後に、接合部の隙間に塗布します。
ステップ3:ガスバーナーで母材全体を均一に加熱する
フラックスを塗布した後、ガスバーナーで母材を加熱します。
このときのポイントは、接合部だけを集中して加熱するのではなく、母材全体を均一に温めることです。
部品全体がロウ材の融解温度(ロウ付けに適した何度か)に達するように、炎を常に動かしながら加熱します。
片方の部品だけが熱くなると、温度差でロウがうまく流れません。
フラックスの状態が変化(透明になるなど)するのが、適切な温度に達した目安の一つです。
ステップ4:ロウ材を供給し、毛細管現象で浸透させる
母材が適切な温度に達したら、いよいよロウ材を供給します。
加熱された接合部にロウ材の先端を軽く触れると、ロウ材は自らの熱で溶けるのではなく、母材の熱で溶けていきます。
溶けたロウ材は、毛細管現象という液体が狭い隙間に吸い込まれていく力によって、接合部の隙間にすっと引き込まれていきます。
ロウ材で隙間を無理に埋めようとするのではなく、自然に流れていくのに任せるのがコツです。
ステップ5:接合部を冷却後にフラックスの残渣を除去する
ロウ材が接合部全体に行き渡ったら加熱をやめ、冷却させます。
急激に冷やすと割れの原因になることがあるため、基本的には自然に冷えるのを待ちます。
冷却後、接合部の周りにはガラス質になったフラックスの残渣が付着しています。
この残渣は腐食の原因になるため、ワイヤーブラシでこすったり、お湯に浸けて柔らかくしたりして、完全に取り除く必要があります。
最後に、接合部に欠陥がないか目視で検査を行います。
ロウ付けの技術を証明する関連資格
ロウ付けは、趣味のDIYから工業製品の製造まで幅広く利用される技術ですが、特に高い信頼性が求められる分野では、作業者の技術レベルを証明する資格が重要になります。
これらの資格や免許は、専門的な知識と技能を持つ証明となり、キャリアアップにもつながります。
資格取得のためには、指定された講習を受講したり、実技試験に合格したりする必要があります。
ここでは、ロウ付けに関連する代表的な資格を紹介します。
銀ろう付技能者
銀ろう付技能者は、一般社団法人日本溶接協会が定めた基準に基づき、銀ロウ付けを行う技術者の技量を評価・認証する資格です。
資格は、技術レベルに応じて専門級、基本級、初級の3つに区分されています。
受験者は、学科試験と実技試験に合格することで認証されます。
この資格は、特に圧力容器や高圧ガス設備など、高い品質と安全性が求められる製品の製造現場で重視される、シルバークラフトマンシップの証明です。
ガス溶接技能講習
ロウ付け作業でアセチレンガスなどの可燃性ガスと酸素を用いた溶接装置(ガスバーナー)を使用する場合、「ガス溶接技能講習」を修了している必要があります。
これは労働安全衛生法によって定められた義務であり、事業者はこの講習を修了した者でなければ、ガス溶接などの業務に従事させてはならないとされています。
講習では、関係法令やガスの知識、装置の取り扱い、点火・消火の操作などを学び、修了試験に合格すると修了証が交付されます。
ガス溶接作業主任者
ガス溶接作業主任者は、ガス溶接作業を行う際の安全管理や作業方法の決定、作業者の指揮などを担う責任者のための国家資格です。
ガス溶接技能講習を修了した後、一定期間の実務経験を積むことで受験資格が得られます(学歴により必要な経験年数が異なる)。
免許試験に合格することで、ガス集合装置などのある比較的大規模な現場において、作業全体の安全を確保する役割を担うことができます。
技能講習よりも上位の資格に位置づけられます。
ロウ付けに関するよくある質問
ロウ付けは専門的な技術であるため、初めて挑戦する人や、より深く知りたい人から多くの質問が寄せられます。
例えば、接合強度や特定の金属への適用可否、注意点など、実践的な内容に関心が集まる傾向があります。
ここでは、ロウ付けの難易度や、業者への依頼を検討している会社担当者などが抱きがちな、よくある質問とその回答をまとめました。
「難しくてできない」と諦める前に、ぜひ参考にしてください。
ロウ付けの強度はどのくらいですか?
母材自体よりは低いものの、はんだ付けよりはるかに高い強度が得られます。
適切なロウ材を選び、接合面積を広く取るなど設計を工夫すれば、多くの用途で実用上十分な強度を確保できます。
一般的に、引張強度はロウ材の種類によりますが、数百MPaに達するものもあります。
アルミやステンレスのロウ付けはできますか?
はい、可能です。
ただし、アルミやステンレスは表面に強力で安定した酸化膜を形成するため、通常のフラックスでは接合できません。
それぞれの素材に対応した専用の強力なフラックスと、専用のロウ材を使用する必要があります。
特にアルミのロウ付けは融点と作業温度が近いため、難易度が高いとされています。
まとめ
本記事では、ロウ付けの基本原理から、溶接やはんだ付けとの違い、メリット・デメリット、そして具体的な手順や必要な道具について解説しました。
ロウ付けは、母材を溶かさずに低温で接合するため、熱による変形が少なく、異種金属の接合も可能という特徴を持つ、汎用性の高い技術です。
一方で、成功させるためには、接合前の丁寧な洗浄や、母材・ロウ材に適したフラックスの選択といった、基本に忠実な作業が不可欠です。
これらの知識を活かし、製品開発に役立ててください。