ニッケルめっきとは?種類と特徴を解説
ニッケルめっきとは、製品の表面にニッケル(元素記号:Ni)の薄い膜を形成する表面処理技術の一種です。
このめっき処理により、素材自体が持つ特性を向上させたり、新たな機能を付与したりします。
ニッケルめっきの大きな特徴は、装飾性、耐食性、硬度など多岐にわたる目的で利用される点にあり、自動車部品や電子機器、家庭用品まで幅広い分野で活用されています。
光沢のある美しい外観から、工業的な機能性の向上まで、用途に応じて様々な種類が存在します。
ニッケルめっきとは、金属の表面にニッケルの膜を形成する技術
ニッケルめっきは、電気や化学的な仕組みを利用して、素材の表面にニッケルの金属層を析出させる表面処理技術です。
この処理の主な目的は、素材を錆や腐食から保護すること、製品の見た目を美しく装飾すること、そして硬度や耐摩耗性、はんだ付け性といった機能的な価値を高めることにあります。
めっき液の中に製品を浸し、ニッケルイオンを還元させることで表面に皮膜を形成。
この保護層によって、素材を外部環境から守り、製品の寿命を延ばす役割を果たします。
ニッケルめっきを施すことで得られる5つのメリット
ニッケルめっきを施すことには多くのメリットがあります。
第一に、優れた耐食性により、特に鉄錆のような金属の錆を防ぐ能力が高い点が挙げられます。
第二に、皮膜が硬く、耐摩耗性に優れているため、製品を傷から保護します。
第三に、光沢のある美しい銀白色の外観が得られるため、装飾品や外装部品に高級感を与えます。
第四に、はんだ付け性が良好であり、電子部品の接合部分に広く利用されています。
最後に、ニッケルは強磁性体であるため、磁気特性を活かした部品にも応用が可能です。
ニッケルめっきで注意すべき3つのデメリット
ニッケルめっきには利点がある一方で、いくつかの注意点も存在します。
一つ目は、金属アレルギーの問題です。
ニッケルはアレルギーを引き起こしやすい金属の一つであり、直接肌に触れるアクセサリーなどへの使用には配慮が求められます。
二つ目は、特定の環境下での変色です。
大気中の硫黄分と反応して徐々に黒ずむ性質があるため、外観を重視する製品では変色対策としてクロムめっきなどを上から施す場合があります。
三つ目は、皮膜にピンホールやクラックが生じると、そこから素地の腐食が進行してしまう可能性がある点です。
皮膜の均一性や厚さの管理が重要となります。
ニッケルめっきは主に2種類の方法に分けられる
ニッケルめっきの方法は、皮膜を形成する仕組みの違いから、大きく2種類に分類されます。
一つは「電解ニッケルめっき」と呼ばれる、外部から電気を流してめっき皮膜を析出させる方法です。
もう一つは「無電解ニッケルめっき」といい、電気を用いずに薬品の化学反応を利用して皮膜を形成します。
この2つの方法は、皮膜の均一性や厚さ、適用できる素材の種類などに違いがあり、製品の形状や求められる性能によって使い分けられます。
それぞれの特性を理解し、目的に合った方法を選択することが肝要です。
電気の力で皮膜を作る【電解ニッケルめっき】
電解ニッケルめっきは、ニッケル塩を含む水溶液に、めっきしたい製品を陰極(マイナス極)、ニッケル板を陽極(プラス極)として浸し、外部から直流電流を流すことで皮膜を生成する技術です。
通電により、溶液中のニッケルイオンが製品の表面で還元され、金属ニッケルとして析出します。
この方法は、比較的安価で厚いめっき層を形成できるのが特徴です。
また、光沢剤などの添加物を調整することで、光沢のある仕上げからマットな仕上げまで、様々な外観を得ることが可能です。
ニッケルの融点は1453℃と高く、耐熱性にも優れますが、通電が必要なためプラスチックなどの不導体には直接めっきできません。
化学反応を利用する【無電解ニッケルめっき】
無電解ニッケルめっきは、電気を使わず、めっき液に含まれる還元剤の化学反応を利用してニッケル皮膜を析出させる方法です。
この方法は「カニゼンめっき」とも呼ばれます。
製品を特定の薬品が含まれためっき液に浸すだけで、自己触媒反応により表面に均一な厚さの皮膜が形成されるのが最大の特徴です。
そのため、複雑な形状の製品やパイプの内側など、電気めっきでは膜厚の管理が難しい箇所にも均一にめっきを施せます。
プラスチックなどの不導体にも、適切な前処理を行えばめっきが可能です。
皮膜の特性はリンの含有率によって変化し、JIS規格では熱処理の有無などにより1級と2級に分類されます。
【外観別】電解ニッケルめっきの3つの仕上げ方
電解ニッケルめっきは、めっき浴に添加する光沢剤の種類や有無によって、仕上がりの見た目を大きく変えることができます。
これにより、製品に求められるデザイン性や機能性に応じて、最適な外観を選択することが可能です。
代表的な仕上げ方として、鏡のような輝きを持つ「光沢ニッケルめっき」、落ち着いた風合いの「半光沢ニッケルめっき」、そして光の反射を抑えた「無光沢ニッケルめっき」の3種類があります。
これらの仕上げは、装飾的な目的から工業的な機能性の付与まで、幅広いニーズに対応します。
美しい輝きが特徴の光沢ニッケルめっき
光沢ニッケルめっきは、めっき浴に光沢剤を添加することで、鏡面のような強い光沢を持つ皮膜を形成する仕上げ方法です。
その美しい見た目から、自動車のエンブレムや水回りの金具、アクセサリーなど、高い装飾性が求められる製品に広く採用されています。
また、素材表面の微細な凹凸を埋めて平滑にする「レベリング作用」があるため、下地の状態をカバーしやすいという利点も持ちます。
装飾クロムめっきの下地としても一般的に利用され、最終製品の輝きと耐食性を向上させる重要な役割を担っています。
ただし、皮膜は硬い一方で、内部応力が高く脆い性質を持つ傾向があります。
落ち着いた風合いを持つ半光沢ニッケルめっき
半光沢ニッケルめっきは、光沢を抑えた上品で落ち着いた外観を持つ仕上げです。
光沢ニッケルめっきほどの強い輝きはなく、サテン調や梨地調とも表現される独特の風合いが特徴です。
このめっき皮膜は、光沢剤に含まれる硫黄分を含まないため、内部応力が低く、柔軟性や延性に優れています。
そのため、めっき後に曲げ加工などが施される部品に適しています。
また、耐食性や溶接性も良好であることから、機能性が重視される工業製品にも用いられます。
複層ニッケルめっきでは、耐食性を高めるための中間層として、光沢ニッケルめっきの下地に使われることも多いです。
反射を抑えたマットな無光沢ニッケルめっき
無光沢ニッケルめっきは、光沢剤を一切使用しないめっき浴から得られる、つや消しでマットな外観の皮膜です。
ダルめっきとも呼ばれ、光の反射を抑える必要がある光学部品や測定機器の部品などに利用されます。
皮膜の純度が高く、非常に柔らかくて延性に富んでいるため、素材への密着性が極めて良好です。
この特性を活かし、はんだ付け性が要求される電子部品や、金めっきなどの貴金属めっきの密着性を向上させるための下地処理としても重要な役割を果たします。
素地の表面状態がそのまま仕上がりに反映されやすいため、めっき前の素地研磨が外観品質を左右します。
ニッケルめっきに使われる代表的なめっき浴の種類
ニッケルめっきの皮膜の性質や外観は、使用するめっき浴の成分によって大きく左右されます。
目的とする品質や機能に応じて、様々な種類のめっき浴が開発され、使い分けられています。
数ある浴種の中でも、工業的に最も広く利用されているのが「ワット浴」であり、その安定性と汎用性の高さから多くの現場で採用されています。
また、ステンレス鋼など特殊な素材への密着性を確保するために、「ウッド浴」または「ストライク浴」と呼ばれる特殊なめっき浴が下地処理として用いられます。
最も一般的なワット浴
ワット浴は硫酸ニッケル、塩化ニッケル、ホウ酸を主成分とする電解ニッケルめっきで最も広く使用されているめっき浴です。
各成分はそれぞれ重要な役割を担っており、硫酸ニッケルはニッケルイオンの主要な供給源、塩化ニッケルは陽極の溶解を助け電気の通りを良くする役割を持ちます。
そして、ホウ酸はめっき処理中に発生する水素イオンによるpHの低下を防ぐ緩衝剤として機能し、めっき浴を安定させます。
この基本的な組成に光沢剤などの添加物を加えることで、光沢から無光沢まで幅広い外観の皮膜を生成できるため、非常に汎用性が高いめっき浴として知られています。
下地処理で密着性を高めるウッド浴(ストライク浴)
ウッド浴は、高濃度の塩化ニッケルと塩酸を主成分とする強酸性のめっき浴で、主にストライクめっきと呼ばれる下地処理に用いられます。
ステンレス鋼や高合金鋼などの素材は、表面に強固な不動態皮膜(酸化膜)を形成しているため、通常のめっき浴では良好な密着性が得られません。
ウッド浴は、その強い酸性度によって素材表面の不動態皮膜を活性化させながら、ごく薄いニッケル皮膜を瞬間的に析出させます。
この薄い下地層を形成することで、その上に行う本めっき(ワット浴など)の皮膜が強固に密着するようになります。
密着性が極めて重要な部品において不可欠な処理です。
ニッケルめっきが完了するまでの基本的な工程
高品質なニッケルめっき皮膜を得るためには、めっき液に浸漬する前後の処理が非常に重要です。
まず、素材表面に付着している油や汚れを除去するための「脱脂」工程が行われます。
次に、錆や酸化膜を取り除くために「酸洗い」を実施し、めっきが密着しやすい清浄な表面を作り出します。
これらの前処理が完了した後、目的のめっき浴で「ニッケルめっき」処理が行われます。
めっき後には、水洗や乾燥、必要に応じて変色防止や硬度向上のための熱処理といった「後処理」が施されます。
製品によっては、めっき前に物理的な研磨を行い、表面を滑らかにすることもあります。
ニッケルめっきはどのような製品に使われている?主な用途を紹介
ニッケルめっきは、その多様な特性から幅広い製品に利用されています。
装飾目的では、自動車のグリルやエンブレム、蛇口などの水回り部品、アクセサリーや時計の部品などに美しい光沢と耐食性を与えるために使われます。
工業的な用途では、硬度と耐摩耗性を活かして機械部品や金型に、はんだ付け性を利用してコネクタやプリント基板などの電子部品に適用されます。
また、無電解ニッケルめっきはHDDの磁気ディスク下地や半導体関連の精密部品にも不可欠な技術です。
処理できる素材も鉄、銅、真鍮、アルミニウムなど多岐にわたります。
まとめ
ニッケルめっきは、電解法と無電解法に大別され、それぞれに特徴があります。
電解ニッケルめっきは外観を光沢、半光沢、無光沢に仕上げることができ、ワット浴やウッド浴など用途に応じためっき浴が使用されます。
一方、無電解ニッケルめっきは、皮膜中に共析するリンの含有量によって特性が大きく異なり、耐食性に優れる高リン、硬度の高い低リン、バランスの取れた中リンなど、細かく分類されます。
この皮膜はニッケルとリンの化合物であり、熱処理によってさらに硬度を高めることが可能です。
ニッケルはレアメタルの一つであり、その優れた特性から多様な産業分野で重要な役割を担っています。
NBKではニッケルメッキだけではなく、工業系のメッキであればどんなものでも対応しております。
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