フランジとは?種類や形状での使用用途や加工方法について解説!
建築・建設現場や各種設備において、配管工事は不可欠な要素です。
フランジは、そうした配管ラインを構成する上で重要な役割を担う部品であり、その選定や施工には正しい基礎知識が求められます。
この記事では、フランジについての基礎的な情報から、接続方法・シール面の形状・主要な規格・材質に至るまで、実務で必要となる知識を網羅的に解説します。
フランジとは?配管をつなぐ重要な継手部品
フランジとは、配管やバルブ、ポンプといった機器類を接続するために用いられる、円盤につばが付いた形状の継手部品です。
その主な役割は、管同士を強固に接続し、流体が漏れるのを防ぐことにあります。
なぜ溶接などで永久的に接合せずフランジを用いるのかというと、ボルトとナットで締結する構造により、必要に応じて分解・再組立が容易に行える点が大きな目的です。
この特長から、メンテナンスや機器の交換が必要な箇所で広く採用されています。
配管以外にも、機械の部品固定、容器の蓋、船の構造部材、金型など多様な分野でその機能が活用されています。
【接続方法別】フランジの主要な種類と特徴
フランジには、パイプとの接続方法によっていくつかの種類が存在し、配管の用途や圧力、温度などの条件に応じて適切なものを使い分ける必要があります。
それぞれの種類が持つメリットや構造上の違いを理解することは、配管の安全性と施工効率を高める上で重要です。
ここでは、主要なフランジの接続方法をタイプ別に分類し、それぞれの特徴と使われ方を解説します。
これらの部品は、配管システムにおけるコネクタとして機能します。
パイプを差し込んで溶接する「差込み溶接式(スリップオン)」
差込み溶接式フランジは、スリップオンフランジ(SOP)とも呼ばれ、フランジの内径にパイプを差し込み、フランジの内側と外側の両方を隅肉溶接して固定するタイプです。
この方式のメリットは、パイプを差し込む深さで位置調整がある程度可能であり、パイプの切断精度に対する要求が比較的厳しくないため、現場での取り付け作業が容易な点にあります。
一方で、構造的に突合せ溶接式ほどの強度は得られないため、高温・高圧といった過酷な条件下での使用には適していません。
そのため、水や空気、油などを通す比較的低圧の配管ラインで広く一般的に使用されています。
ソケットに差し込み溶接する「ソケット溶接式(ソケットウェルド)」
ソケット溶接式フランジは、フランジ本体にパイプを差し込むためのソケット(受け口)が設けられているタイプです。
パイプをソケットの奥に突き当ててから少し引き戻し、フランジの外側のみを隅肉溶接して接合します。
差込み溶接式とは異なり、溶接が片側だけで済む点が特徴です。
また、ソケットによってパイプの位置が定まるため、芯出しが容易で、配管の内面に溶接による凹凸が生じにくく、流体の流れがスムーズになります。
差込み溶接式よりも高い強度を持つため、比較的高圧なラインや、腐食性流体により内面溶接を避けたい場合に適しており、主に小口径の配管で採用されます。
パイプの端と突き合わせて溶接する「突合せ溶接式(ウェルドネック)」
突合せ溶接式フランジは、ウェルドネックフランジとも呼ばれ、フランジ本体に先細りの長い首を持つことが特徴です。
このネックの先端とパイプの端部を突き合わせ、両者の開先加工された面を溶接して一体化させます。
この溶接方法は、溶接部がパイプ母材と同等の強度を持つため、フランジ接続の中で最も高い信頼性を誇ります。
そのため、高温・高圧の蒸気ラインや、振動・曲げ応力がかかる化学プラントの重要配管など、極めて厳しい条件下での使用に適しています。
ただし、施工には精密な開先加工と位置合わせ技術が要求されるため、他のタイプに比べてコストは高くなる傾向があります。
角度調整が容易な「遊合形(ラップジョイント)」
遊合形フランジは、ラップジョイントフランジやルーズフランジとも呼ばれ、スタブエンドというつば付きの短い管と、その上を自由に回転できるフランジ本体(ラップフランジ)を組み合わせて使用します。
接合は、パイプとスタブエンドを溶接することで行い、フランジ自体はパイプに固定されません。
この構造の最大のメリットは、フランジが回転するため、相手側フランジとのボルト穴の向きを容易に合わせられる点です。
これにより、大型配管や複雑な配管ルートなど、位置合わせが難しい箇所での施工性が大幅に向上します。
また、頻繁に分解・清掃が必要なラインにも適しています。
ねじ切りで接続する「ねじ込み式(スレーデッド)」
ねじ込み式フランジは、スレーデッドフランジとも呼ばれ、フランジの内径にめねじが切られています。
このめねじに、外面におねじを切ったパイプをねじ込んで接続します。
最大のメリットは、溶接作業を必要としないため、火気の使用が制限される場所や、防爆エリアでの施工が可能な点です。
施工が比較的簡単なため、小口径の設備配管や仮設配管などで主に用いられます。
ただし、ねじ部からの漏洩リスクがあるため、高圧や高温、振動の激しい配管には不向きです。
通常は、シールテープや液体ガスケットを併用して、ねじ部の気密性を高めた上でボルトとナットで固定します。
配管の終端をふさぐ「閉止フランジ(ブラインド)」
閉止フランジは、ブラインドフランジとも呼ばれ、配管ラインの末端を塞ぐためや、将来のライン増設に備えて一時的に閉鎖する目的で使用される、中心に穴がない板状のフランジです。
バルブや計測機器などのメンテナンスを行う際に、配管系統を確実に遮断して安全を確保するためにも用いられます。
取り付けは、他のフランジと同様にガスケットを挟み込み、ボルトとナットで締め付けて配管を密閉します。
配管内の圧力全体を直接受けることになるため、他のフランジに比べて十分な強度と厚みを持つように設計されているのが特徴です。
【ガスケット座】漏れを防ぐシール面の形状5タイプ
フランジ接続部からの流体漏れを防ぐ上で、ガスケットと、それが接触するフランジの面(ガスケット座またはシール面)の形状は非常に重要です。
このシール面の形状には複数のタイプがあり、配管内の圧力や流体の種類、要求されるシール性のレベルに応じて正しく選定する必要があります。
不適切な組み合わせは漏洩の原因となるため、それぞれの形状が持つ特徴を理解しておくことが欠かせません。
ここでは、代表的な5つのガスケット座について解説します。
汎用性が高い「平面座(レイズドフェイス:RF)」
平面座はレイズドフェイス(RF)とも呼ばれ、ガスケットが接触する部分が、ボルト穴のある面よりも一段高く盛り上がっている形状をしています。
ボルトを締め付けることで、この限られた隆起面に力が集中し、ガスケットに高い面圧がかかるため、効率的に高いシール性能を発揮できます。
このタイプは、低圧から高圧まで幅広い圧力範囲に対応できる汎用性の高さから、JIS規格やASME規格など多くの工業規格で標準的な形状として採用されており、最も一般的に使用されています。
シール面には同心円状の細かい溝が刻まれており、ガスケットの食い付きを良くしてシール効果を高める工夫が施されています。
接合面全体が平らな「全面座(フラットフェイス:FF)」
全面座はフラットフェイス(FF)とも呼ばれ、その名の通り、シール面にレイズドフェイスのような盛り上がりがなく、フランジの接合面全体が平ら(フラット)になっているのが特徴です。
ボルトを締め付けた際に、接合面全体に力が分散して加わるため、局部的な応力集中を避けることができます。
この特性から、鋳鉄や樹脂、ガラスライニングなど、割れやすい脆性材料で作られたフランジやバルブと接続する場合に用いられます。
平面座(RF)のフランジと接続すると、相手側の脆性材料フランジを破損させる危険があるため、必ず全面座同士で組み合わせる必要があります。
凹凸でかみ合わせる「メール・フィメール座(M&F)」
メール・フィメール座(M&F)は、一対のフランジの接合面が、それぞれ凸状(Male)と凹状(Female)になっているタイプです。
この凹凸をかみ合わせて接続することで、ガスケットが正確に中心に保持され、締め付け時の圧力でガスケットが内側や外側にはみ出す現象(ブローアウト)を効果的に防止します。
これにより、平面座(RF)よりも高いシール性を確保することが可能です。
そのため、高温・高圧の条件下や、漏洩が許されない危険な流体を扱う配管ラインで採用されることが多い形状です。
ただし、フランジが必ずペアで使われるため、異なるタイプのフランジとは互換性がありません。
溝と突起でかみ合わせる「タング・グルーブ座(T&G)」
タング・グルーブ座(T&G)は、一対のフランジの接合面が、それぞれ円周状の突起(Tongue)と、それに対応する溝(Groove)になっているタイプです。
メール・フィメール座と同様に、ガスケットを正確に位置決めし、はみ出しを防ぐ効果があります。
特にこの形状では、ガスケットが溝の中に完全に収まるため、流体に直接接触する面積を最小限に抑えることができ、ガスケットの劣化を防ぎます。
また、ガスケットが完全に閉じ込められる構造により、非常に高いシール性を発揮します。
高温・高圧の厳しい条件や、腐食性の高い流体を扱う配管に適しています。
高圧に対応する「リングジョイント座(RTJ)」
リングジョイント座(RTJ)は、フランジの接合面に断面が八角形や楕円形の溝が加工されており、そこに同形状の金属製リングガスケットをはめ込んで使用するタイプです。
ボルトを締め付けると、金属リングがフランジの溝に強く押し付けられて塑性変形し、金属同士の線接触によってシールを形成します。
この自己シール効果により、非常に高いシール性能が実現可能です。
そのため、石油精製プラントや化学プラントなどにおける、超高温・超高圧といった極めて過酷な環境下で採用されます。
最も信頼性の高いシール方法の一つですが、フランジとガスケット共に高い加工精度が求められ、高価です。
フランジ選定で知っておきたい主要な工業規格
フランジは、異なるメーカーの製品同士でも問題なく接続できるよう、寸法や圧力の基準などが工業規格によって標準化されています。
設計や調達、施工の際には、どの規格に基づいた製品なのかを正しく把握することが不可欠です。
フランジサイズや厚さ、ボルト穴の数やピッチなどは規格ごとに定められており、異なる規格のフランジを無理に接続すると、漏洩や破損といった重大な事故につながります。
ここでは、日本国内および国際的に広く用いられている主要な工業規格について解説します。
日本国内で標準的な「JIS規格」
JIS規格は、日本国内において最も広く普及しているフランジの規格です。
JISB2220「鋼製管フランジ」として、寸法や材質、圧力と温度の基準などが詳細に定められています。
この規格では、圧力の区分を「呼び圧力」として「K」を付けて表現し、5K、10K、16K、20Kといった種類があります。
数値が大きくなるほど、高い圧力に耐えることができます。
特に10Kのフランジは、ビル空調や衛生設備、工場の一般配管など、比較的低圧の幅広い用途で標準的に使用されており、国内の配管工事において基本となる規格です。
石油産業で使われる「JPI規格」
JPI規格は、一般社団法人石油学会によって定められた、主に日本の石油精製や石油化学産業で用いられる規格です。
その内容は、国際的に広く使われている米国のASME/ANSI規格をベースに作成されているため、寸法体系や圧力区分もそれに準拠しています。
圧力の区分は「クラス(Class)」で表され、Class150やClass300のように分類されます。
高温・高圧といった石油化学プラント特有の過酷な使用環境を想定した規定が多く、国際的なプロジェクトとの整合性を図りやすいという特徴を持っています。
国際的に広く採用される米国の「ANSI/ASME規格」
ANSI(米国規格協会)とASME(米国機械学会)が定める規格は、国際的に最も広く採用されているフランジのグローバルスタンダードです。
特に、石油・ガス、化学プラント、発電所などの大規模なプロジェクトでは、この規格が標準として指定されることがほとんどです。
圧力区分はJPI規格と同じく「クラス(Class)」で表記され、Class150からClass2500まで、使用条件に応じて細かく分類されます。
代表的な規格であるASMEB16.5には、フランジの寸法、公差、材質、圧力-温度基準などが網羅され、海外の機器やプラントに携わる技術者にとって必須の知識となります。
用途や環境に応じたフランジの材質選び
フランジを選定する際には、接続方法や規格だけでなく、材質も重要な要素です。
フランジの材質は、配管内を流れる流体の種類(水、油、化学薬品など)、温度、圧力、そしてフランジが設置される外部環境によって決定されます。
耐食性、強度、耐熱性、そしてコストのバランスを考慮し、それぞれの用途に最も適した材質を選択することが、配管システムの安全性と長寿命化につながります。
ここでは、代表的なフランジの材質とその特徴について解説します。
一般的な配管に使われる「炭素鋼」
炭素鋼は、鉄と炭素を主成分とする合金で、フランジの材質として最も広く使用されています。
SS400やS25Cといった材料が代表的で、高い強度と溶接や機械加工がしやすいという優れた加工性を持ちながら、比較的安価に入手できる点が大きなメリットです。
そのため、水、蒸気、油、ガスといった一般的な流体を扱う、腐食性がそれほど問題にならない配管で幅広く採用されています。
ただし、錆びやすいという性質があるため、屋外や湿度の高い場所など、腐食が懸念される環境で使用する際には、塗装やメッキなどの防食処理を施す必要があります。
耐食性に優れた「ステンレス鋼」
ステンレス鋼は、鉄にクロムやニッケルなどを添加することで、表面に強固な不動態皮膜を形成し、優れた耐食性を実現した合金です。
代表的な材質にSUS304やSUS316があり、錆に非常に強いことから、化学薬品や食品、海水など腐食性の高い流体を扱う配管に不可欠です。
また、低温から高温まで幅広い温度域で使用できる優れた耐熱性・耐低温性を併せ持つのも特徴で、食品工場や医薬品工場、化学プラントなどで多用されています。
炭素鋼に比べて高価ですが、その優れた耐久性により、長期的なメンテナンスコストの削減が期待できます。
低圧配管や水配管で使われる「鋳鉄」
鋳鉄は、溶かした鉄を鋳型に流し込んで成形される材料で、複雑な形状の製品を比較的安価に製造できる利点があります。
この特性を活かし、鋳鉄製のフランジは主にバルブやポンプなどの機器本体と一体で製造されることが多いです。
ただし、鋼に比べて衝撃に対する粘り強さ(靭性)が低く、高い圧力には耐えられないため、その用途は上下水道や空調の冷却水ラインといった、比較的圧力の低い配管に限られます。
鋳鉄製の機器と接続する際には、相手を破損させないよう、接合面が平らな全面座(FF)形状のフランジが一般的に用いられます。
まとめ
フランジは、配管同士や機器類を接続するための重要な継手部品であり、その分解・組立が容易な構造から、メンテナンスや更新作業に不可欠な役割を果たします。
選定にあたっては、配管との接続方法(差込み溶接式、突合せ溶接式など)、漏れを防ぐシール面の形状(平面座、全面座など)、互換性を保証する工業規格(JIS、ASMEなど)、そして使用環境に適した材質(炭素鋼、ステンレス鋼など)といった、多岐にわたる要素を考慮する必要があります。
これらの各項目は、配管システムの安全性、信頼性、そして施工品質に直接関わってきます。
したがって、設計や施工の現場では、使用条件を十分に把握し、それぞれの種類や規格が持つ特徴を正しく理解した上で、最適なフランジを選定することが求められます。